「自由が丘ミルクフランス」3種が、Trainchi D棟の一軒だけに並んでいる
1933年創業のブランジェ浅野屋。 本店は軽井沢旧道、東京にもいくつか店舗がある。 でも、商品名に「自由が丘」と刻まれたパンが置かれているのは、 Trainchi D棟、たった1店舗だけ。 しかも、3種類になっていた。
商品名に「自由が丘」と書いてあるパン
ブランジェ浅野屋。1933年、東京・麹町6丁目に開業した「浅野屋商店」がはじまり。軽井沢に夏季出張所を構えたのは1940年、避暑で東京を訪れる外国人外交官や家族の要望に応えるためだった。本店は今も軽井沢旧道にある。
各地に広がる店舗のなかで、商品名に「自由が丘」と書かれたパンを売っているのは、自由が丘店だけ。
東急東横線・大井町線の高架沿い、Trainchi D棟。約80種類のパンが並び、2階にはイートインスペースがある。電車を眺めながら焼き立てを食べられる、あの場所。
バタークリームパンが、2024年の秋に小さくなって戻ってきた
話は2023年にさかのぼる。創業90周年の年、浅野屋は「復刻パンアンケート」を実施した。お客さんに、もう一度食べたい昔のパンを選んでもらう企画。
最多得票は、バタークリームパン。
自由が丘店で期間限定で復刻したところ、今度はこういう声が届いたという。「お土産用に小さいサイズが欲しい」「期間限定じゃなくて、いつも置いてほしい」。
その声に応えて、2024年10月。「自由が丘ミルクフランス」という名前で、通年販売の商品として再デビューした。直径約12cm、初代より小ぶり。フランスパン生地に、自家製の練乳バタークリームを挟む。
3種類になっていた
それから1年半。2026年5月、棚を見ると3種に増えていた。
- 練乳ミルク 230円。通年販売。自家製練乳バタークリームをフランス生地で挟む、原型のかたち
- ショコラ 260円。季節限定。自家製ガナッシュカスタード入り
- マイヤーレモンバター 250円。季節限定。信州産マイヤーレモンを使ったバターを挟む
信州産、というのが目に止まる。浅野屋の本店は軽井沢旧道。1986年には日本で初めてスペイン・ファルファス社製の円形石窯を設置した店だ。麹町ではじまり、軽井沢で育ち、自由が丘の高架下で「自由が丘」を冠する。土地の名前が3つ、1つのパンの背景に重なっている。
噛むと、どう違うのか
フランスパン生地のぱりっとした断面に、白いクリームがとろりと挟まっている。練乳ミルクは、まず甘さがやさしく広がる。ショコラは、ガナッシュカスタードという響きだけで重さを想像してしまうけれど、それを「自家製」の3文字と一緒に噛んで確かめる、その順番が3種を巡る楽しみだ。
マイヤーレモンバターは、5月という季節に置かれていることに意味がある気がする。初夏の手前、レモンの黄色が一番似合う頃。信州のレモンを使ったバターを、フランス生地で挟む。
次の朝に
230円から260円。1個ずつ違う種類を3つ買っても740円。
朝8時半に店が開く。電車の音が頭の上を走り抜けていくTrainchi D棟の店内、ガラスケースに並んだ「自由が丘」の文字。次の朝、自由が丘で何か食べるなら、まずあそこから始めてみようと思う。3種のうち2つには「季節限定」と書かれている。次に棚の前に立つときに、3つ揃っているのか、別の組み合わせになっているのかは、その朝になってみないとわからない。