街にひとつ残った銭湯が、ただの銭湯ではなくなった日 — みどり湯69年目
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街並み 読 2分

街にひとつ残った銭湯が、ただの銭湯ではなくなった日 — みどり湯69年目

自由が丘エリアに残る銭湯は、いま一軒だけ。創業者がかつて経営した7軒の最後の一軒、みどり湯。69年目の今は、隣にギャラリー、その2階に茶室を背負っている。

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7軒のうち、残ったのは一軒

自由が丘駅から緑が丘方面へ歩いて7分。商業地の音が遠のいたあたりに、煙突が見える。みどり湯は1957年(昭和32年)に開いた銭湯で、来年で創業70年になる。

創業者は山田岸左衛門さん。かつてこのエリアで7軒の銭湯を経営していた、と東京銭湯の記事にある。

街が近代化していく過程で、その7軒は一つずつ建物に置き換わっていった。今、自由が丘エリアに残っている銭湯は、みどり湯だけ。

7分の1。

ただの銭湯ではなくなった日

4代目の女性店主・清水智子さんが店を継いでから、みどり湯はゆっくりと姿を変えてきた。1991年にフロント化、2011年にガス化、2022年11月にフロント改装。Hanako Web の取材によれば、清水さんが目指したのは「人と人がつながり癒される場」だった。

その結果、湯屋の隣にギャラリーが立った。

gallery yururi。住所は緑が丘 2-7-13、みどり湯の真隣。展示やイベントに使えるコンパクトな空間で、運営は清水さんのご主人。ギャラリーの2階には茶室があり、月1回、初心者向けの茶道体験が開かれている、と Hanako Web は伝えている。

銭湯と、ギャラリーと、茶室。

入浴料 約 460 円の湯屋を起点に、文化の小さな複合体ができている。隣の扉を開ければ誰かの絵や写真が並び、階段を上ると静かなお茶の時間が待っている。「ただの銭湯」と呼ぶには、もう輪郭が違う。

浴場の中の景色

肝心の湯について。

バイブラ付きの風呂、ジェット付きの座湯、サウナ、水風呂、ボディシャワー。地下水を一部使っている。サウナは別料金で 200〜300 円、手ぶら入浴セットは 160〜210 円。タオルとアメニティが付くので、散歩のついでに身ひとつで寄れる。

浴場内には銭湯絵がある。女湯側と男湯側で、それぞれ富士山が描かれている。誰が現在の絵を手がけたかについては、号外NET・Hanako Web と東京銭湯とで記される絵師名が異なる。確かなのは、富士山の絵が、今もそこにあるということ。

レトロなヘルメット型のドライヤーも残っている、と Hanako Web は書いている。

あの煙突を、参照点として

緑が丘 2-7-14 の住所は、自由が丘の住人にとってちょっとした参照点になる。あの煙突が見えるあたり、と言えば位置が伝わる。商業地の華やかさから少し外れた、駅から歩ける範囲に、まだみどり湯がある。

清水さんは号外NET の取材にこう答えていた。「銭湯だって同じ。日本のお風呂文化の一つとして、街に欠かせない愛すべき場所として、受け継がれていってほしい」。

7軒のうち6軒は、もう建物に置き換わっている。

残った一軒が、ギャラリーと茶室を背負いながら、69年目の湯を沸かしている。住人にとっての参照点が、いつのまにか少し更新されていた。

教えたい気持ちと、教えたくない気持ちが、半分ずつ。あの煙突が立ち上っている時間に、また体を温めに行こう。