江戸の氷が令和の庁舎で溶ける — 7月6日・7日、飛脚が目黒区役所へ
1月に湯涌温泉で仕込まれた雪が、飛脚姿で目黒区役所へ届く。7月6日と7日、加賀藩が将軍家へ献上した習わしが庁舎ロビーで再現される。
1月に踏んだ雪が、7月に区役所へ届く
雪の話を、7月にしている。
金沢の湯涌温泉では、毎年1月の最終日曜に地元の人と観光客が「氷室小屋」に雪を詰めて踏み固める。そのまま夏まで眠らせて、6月30日に切り出す — 「氷室開き」と呼ばれる、金沢の夏の風物詩だ。切り出された雪氷は、石川県知事と金沢市長のほか、加賀藩下屋敷があった板橋区と、友好都市の目黒区へ贈られる。
運び手は、飛脚。石川県トラック協会の人たちが飛脚の装束をまとい、長持ちに雪氷を詰めて江戸まで — いや、令和の東京まで運んでくる。
なぜ目黒区か
目黒区と金沢市が友好都市協定を結んだのは2017年。縁は、前田家16代当主の旧邸が目黒区内にあったことにさかのぼる。江戸時代、加賀藩は氷室の雪氷を徳川将軍家へ献上する習わしを持っていた。その習わしを、令和の区役所ロビーで再現している。
区役所のロビーで、江戸の氷が溶けていく。少し不思議な絵だと思う。
7月6日と7日、どこで何がある
「食べておいしい、見て涼しい! 金沢ウイーク」は、7月6日と7日の2日間。
- 7月6日 — 本館3階・南口エントランスで15時から16時、雪氷の展示と贈呈式。飛脚姿の到着セレモニーは、この時間になる。
- 7月7日 — 本館1階・西口ロビーで11時から16時、雪氷の展示。
金沢銘菓の販売と、金沢カレーの提供もある。金沢カレーは各日80食限定。2日間、3階と1階のロビーに、加賀の食が日ごとに並ぶ。
雪氷は庁舎内の温度で徐々に溶ける。展示の終了時刻が予定より早まる可能性がある。
昨年と、雪が減っていくこと
昨年 (2025年) の同企画では、7月7日が贈呈式、7月8日が展示・物産展という日程だった。展示時間は11時から16時 — ただし、雪氷が溶け次第終了、と告知されていた。ロビーに置かれた雪の塊は、庁舎の温度でゆっくり縮んでいく。
物産のブースでは、のどぐろ茶漬け、からせんじゅ、ぶりみそなどが並んでいた。1,500円以上の購入で金沢クリアファイルの特典配布も。初日は早期の売り切れが相次いだ、という記録が残っている。区役所レストランでは、濃厚なルーにキャベツの千切りとカツを載せてソースをかける金沢カレーが、7月11日まで期間限定で提供されていた。
今年 (2026年) の販売品目は公式発表を待つことになるが、金沢カレー各日80食限定という枠は決まっている。
もうひとつ、この企画に静かに付いてまわる話がある。
湯涌温泉の氷室に仕込む雪は、地球温暖化の影響で少なくなっている。冬に踏んで固めた雪を夏まで眠らせる、というシンプルな習わしが、シンプルではなくなってきている。区役所ロビーで溶けていく雪氷は、江戸の記憶であると同時に、令和の課題も背負っている。
街の生活圏の中で、この2日間
九品仏川緑道の始点、自由が丘駅から東横線で中目黒駅へ3駅。上目黒2丁目の目黒区総合庁舎は、街の生活圏の中にある。7月6日の15時、飛脚が着く瞬間。7月7日の午後、ロビーで氷が縮んでいく時間。
雪は待ってくれない。溶けていく速さで、この2日間は過ぎていく。