日曜午後3時、駅の女神を守る65人 — セザンジュ、17年目の街案内
今日、日曜午後3時。シースルー改札口を抜け、歩行者天国を歩き、駅前ロータリーの女神像へ — その一直線の上に、水色の制服を着た女子学生が立っている。名前は「セザンジュ」、フランス語で「彼女の天使たち」。彼女とは、あの女神像のことだ。2009年に始まり、17年目の日曜がやってきた。
改札を出て、女神まで、一直線
自由が丘駅のシースルー改札口を出ると、歩行者天国が続く。そのまま真っすぐ歩けば、駅前ロータリーの女神像にぶつかる。今日、日曜午後3時。その一直線の上に、水色のベレー帽と制服を着た女子学生が立っている。
団体名は、セザンジュ。フランス語で「彼女の天使たち」を意味する。彼女とは、あのロータリーの女神像のこと。街の中で、女神を守る天使たち。名前の由来を知ってから、もう一度あの一直線を眺めると、少しだけ景色が変わって見える。
2009年12月、10人から始まった
セザンジュが発足したのは、2009年12月。産業能率大学 (世田谷区) の女子学生が、ボランティアとして立ち上げた。翌2010年春には新入生10人が加わり、計20人。「安心・安全の街づくりプロジェクト」の一環で、当時の東京都の体感治安改善事業のモデル地区として、自由が丘が選ばれていた。
活動の目的は、「見せる安全」を実現し、事故を未然に防ぐこと。座学では、防犯訓練、AED講習、サービス接遇。ただ立っているのではなく、立つための訓練を積んでから、街に出る。
2010年の記事で、産業能率大学の武内千草准教授は「活動当初は、来街者の方から質問を受けても的確に答え…」と当時を振り返っている (原文の記述はここで省略記号で途切れる)。半年で夏服に衣替えするまでの間、彼女たちは答え方を覚えていった。
3部門制、月別イベント、無線を持って
そこから17年。今、セザンジュは産業能率大学の「特別強化クラブ」に位置付けられている。大学が街と結ぶ5つの連携プログラム — 自由が丘コンシェルジュ、イベントコラボレーション、スイーツプロモーション、エンターテインメント・ラボと並ぶ1つで、役割は「街の案内人として、自由が丘ブランドを高める」。
現在の在籍は、産業能率大学の公式ページによれば1年生から4年生で65名。3部門制で、広報、人材開発、企画運営に分かれる。商店街振興組合の公式ページには、時点の明記はないが77名 (女子70名、男子7名) と記載がある。数字に差はあるが、どちらを取っても、日曜午後の街の一角に、これだけの人数が立ち続けている事実は変わらない。
2025年度の活動実績を見ると、スイーツフェスタ、盆踊り大会、女神まつり、クリスマス点灯式 — 街の月別イベントに合わせて、彼女たちは動いている。案内だけではない。無線を携え、地域の安全にも関わる。目黒区、警視庁碑文谷警察署、都青少年・治安対策本部から感謝状を受けている。2025年には、目黒区から改めて感謝状が贈呈された。産業能率大学の公式Xには、こう記されている。「その活動内容について目黒区から評価をいただきました」。
街のインフラになる、ということ
15年、17年と続くと、「日曜午後3時に、あの制服の学生が立っている」という風景そのものが、街の一部になる。誰かが特別に足を止めるのではなく、いつも通り過ぎる景色の一部として、そこにある。
不思議なことだ。学生団体である以上、メンバーは4年で入れ替わる。17年で単純計算しても、4回以上世代交代している。それでも同じ場所に、同じ水色の制服で、同じ時間に立ち続けている。継承されているのは、立つ場所と、立つ時間と、立つ意味だ。
女神像は動かない。彫刻家・澤田政廣が制作した蒼穹〈あをそら〉像。1961年 (昭和36年) の作。あれからずっと、駅前ロータリーの同じ場所にいる。その周りを、17年間、65人の彼女たちが交代で守り続けている。像が動かないから、天使たちが動く。
6日後の盆踊りと、次の日曜も
来週土曜日、7月18日から20日までの3日間、駅前ロータリーで自由が丘納涼盆踊り大会が開かれる (自由が丘商店街振興組合と自由が丘住区住民会議の主催)。2025年度のセザンジュの活動実績には「盆踊り大会」が挙げられている。今年の現場対応は当日、公式情報で確認されたい。
日曜午後3時の定常運行に加え、街のイベントの現場にも彼女たちがいる。今日、改札を出て女神像までの一直線を歩く時、水色の制服が視界に入ったら、少し目を止めてみたい。17年目の日曜が、街の日常として続いている。
6日後の盆踊り大会が終わっても、翌週の日曜午後3時には、また彼女たちが立っている。その次の週も。街を歩く時、あの一直線を意識してみようと思う。改札から、歩行者天国を抜けて、女神像まで。守るものと、守る人と、通り過ぎる私たちと。