1982年、2丁目に開いた「キーショップ」 — 私の部屋 自由が丘店、44年目の夏
自由が丘2-9-4、吉田ビル1階。1982年1月、「私の部屋」はこの場所に「キーショップ」を開いた。 以後の全国展開の起点となったその店は、 44年目の夏、京都・山科の陶芸家 的場美幸のうつわ展を7月20日まで開いている。
2丁目に、44回目の夏
自由が丘2-9-4、吉田ビル1階。九品仏川緑道を渡って少し歩いた、引っ込んだ角にその店はある。
「私の部屋」自由が丘店。1982年1月、この場所に「キーショップ」として開いた。あれから44年目の夏を迎えている。
同じブランドの本社は、自由が丘1-24-17、アルテリーベビル2階にある。売り場と本社が、駅を挟んで同じ街に立っている。全国に直営16店とフランチャイズ16店、姉妹ブランド「キャトル・セゾン」の直営24店を合わせて59店舗を持つ会社の、心臓のような二拠点が、この街のなかに収まっている。
「雑誌の名前の店」だった時代
始まりは、店ではなく雑誌だった。
1972年3月、婦人生活社が『私の部屋』を創刊。当時としては珍しかったインテリア雑誌で、公式の50周年コラムはこう振り返っている。「高度成長期で失われていた日本人特有の季節感や文化を取り戻すため、編集者たちの熱い思いで制作」された、「1人暮らしの女の子をターゲット」とした雑誌だったと。
雑誌が売れた。誌面で紹介した商品を売り始めたら、また売れた。それで店を出すことになる。同じ1972年12月、新潟に「ファミリーブティック私の部屋」1号店が開く。翌1973年5月、株式会社を設立。1976年に現社名 (私の部屋リビング) へ変更。
自由が丘に来たのは1982年。東京への出店という節目に、この街の2丁目が選ばれた。ブランド運営会社は公式ページで、自由が丘店を「キーショップ」と位置付けている。
そこから何が起きたかは、業界紹介記事が短く要約している。自由が丘の店は「大好評を得て」、その後の全国展開の転機となった。「1年に1店舗のペースで全国展開が進みました」と。
いま北海道から九州まで散らばっている「私の部屋」の棚は、44年前の自由が丘2丁目のこの角から始まっている。
5年後の1987年9月、同じ街で姉妹ブランド「キャトル・セゾン・トキオ」の日本1号店が開いた。これも自由が丘が入り口だった。
同じ会社が、同じ街で、5年空けて2つのブランドの入り口を並べた。この事実は、少し立ち止まって読み直したくなる。
その1号店が今もそこにあるのかは、公式ページの情報からは確認できない。ただ、「1982年に私の部屋がここへ来て、1987年にキャトル・セゾンが自由が丘に開いた」という2つの起点が、この街から始まったことは、記録として残っている。
44年、同じ理念で
公式ページに載っている店の理念は、雑誌創刊当時のものと地続きになっている。
「日々の暮らしの中にこそ喜びがある」。50周年コラムでは、もう少し具体的に言い換えられている。「人とモノとの間に心が通じあい、モノが準家族のようになり、思い出や物語を持ち主と共に有るようなモノとコトの提案」。
その先には、こう続く。「50年間この思いを維持できたのは、顧客が商品を日常生活に取り入れてくれたおかげ」。
売り手が続けたのではなく、買い手が続けさせた、と言っている。この温度感は、44年間ずっと同じ2丁目に立ち続けた店の言葉として、静かに読める。
商店街振興組合の店舗紹介には、こう書かれている。「1982年自由が丘にオープン。日本の歳時記に添った新商品が毎月入荷します。」贈り物とお祝いの品を軸に、「手工芸作家によるイベントを不定期で開催」する店、と。
いま棚に並んでいるもの — 的場美幸のうつわ
その「手工芸作家によるイベント」が、44年目の7月の店にも来ている。
7月2日から7月20日 (月・祝) まで。京都市山科区で作陶する、岡山県出身の作家 的場美幸のうつわ展。
公式の紹介文はこう書いている。「自然の造形や古い道具の佇まいをヒントに制作。呉須のにじみ、線の濃淡が生み出す偶然の表情を大切にし、古い陶器の絵付けを参考」に、素焼き後に模様を彫り込み、呉須や鉄を重ねる。「いずれの作品も数量・期間ともに限定でのご紹介」。
会期はあと5日ほど。実物は、行って見るしかない。数量限定、期間限定というのは、そういうことでもある。
街が変わる前夜に、変わらない棚がある
44年のあいだ、私の部屋 自由が丘店の店主やスタッフがどう継承されてきたか、公表情報からは追えない。代表取締役 木村真一氏の名前が会社案内に載る、それくらいだ。だから「44年変わらない誰か」の物語は、書けない。書けないまま置いておく。
書けるのは、44年間この場所に棚があり続けたという事実のほうだ。1982年に開いたときのコンセプトが、2026年の公式ページにも同じ形で載っている。「日々の暮らしの中にこそ喜びがある」。
街は少しずつ表情を変えていく。それでも2丁目のこの角には、いつもと同じ棚と、「歳時記に添った新商品」と、次の作家展が並んでいる。
44年目の夏、京都の陶芸家のうつわを見に、九品仏川緑道を渡って少し歩いてみる。街の静かな場所に、街の古い棚のひとつがある。
訪問メモ
- 私の部屋 自由が丘店: 目黒区自由が丘2-9-4 吉田ビル1F
- 営業時間: 平日 11:00-19:00 / 土日祝 11:00-19:30
- 的場美幸 うつわ展: 2026年7月2日 (木) 〜 7月20日 (月・祝)
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